さて,実習に移ろうか。
実際に課題としてやってみよう。
教科書の課題6。
この実習では,向性検査という質問紙による性格テストを,実際にみなさんにおこなってもらいます。向性検査は,教科書の解説や回答用紙にあるように,I-Eテスト,あるいは内向性-外向性検査とも言う。このテスト自体の解説は,次回,性格テストの結果をみなさんにまとめてもらうときに行います。
今回の実験,従属変数は,この向性検査の得点,ということになります。
独立変数は,教科書の説明にもあるように,認知水準の違い,つまり自己認知の方法の違いということになります。
独立変数で比較を行う2条件の一方は,現実自己条件。
2条件の他方は,理想自己条件です。
同一人物が同じテストを2回行うので,順序の効果(これが二次変数)が,自己認知の方法の違い,という独立変数に重なってしまうかもしれない。
これを平均値化するために,相殺 そうさい,別名カウンターバランスという手続きを行います。
Aクラスは,現実自己→理想自己 の順序で行い,
Bクラスは,理想自己→現実自己 の順序で行う。
要するに,半数の人の順序を入れ替えるんだね。これによって,順序の効果が,個々人には現れるけれど,データ全体としては平均値化されていくことになるよ。
※この授業では,他者から見た性格(他者評定)は条件に加えません。
次の板書はメモ書き。
教科書では,被験者 と書いてある。ひけんしゃ,ひけんじゃ,と読む。実験者の研究対象である,実験を受ける人のことだ。調査の場合には,被調査者というよ。
この言葉遣い,近年では「ポリティカル・コレクトネス」の立場から,回避されるようになっている。特に公表する論文・レポート等に執筆する際には,実験の場合,「実験参加者」,あるいは単に「参加者」,調査の場合,「調査協力者」という用語で置き換えている。被験者 subject は,要するに実験台になる人,ということだから,語感やイメージが悪いようだ。これを「政治的に正しく」言い換えて,参加者 participant……つまり研究に関する説明を受けて,みずからの意思で実験を受ける人になった,というわけ。
その下はメモ2
現実自己 理想自己 は社会心理学の重要な専門用語で,板書では上手に文で書けていないけれど……現在の自己と,実際にはない理想として思い描かれた自己,という意味合いである。
わたしたちは,理想自己と比較して現実自己を評価したり,現実自己を見つめたり他者との比較を通して理想自己を構築したりしているよ。
課題の向性検査について,すべての質問に答えてください。無回答ですとデータとして無効になりますので,ご注意ください。
そして,ノート等に回答を記録してください。
そして,こんな風に,学籍番号・現実自己条件,と名前をつけて,写真を撮りましょう。写真をメールで送ってください。
理想自己条件はこんな感じ。
「理想の自分」にあてはまるのか,あてはまらないのか,判断するのは結構難しいけれど,回答してください。
以上2つのテストはクラスごとに順序を変えて,時間をずらして行ってもらいます。
まずはここまで。
<教科書>
木下冨雄・上里一郎・中谷和夫・難波精一郎・辻敬一郎 (1975 / 2018). 教材心理学[第4版] ナカニシヤ出版