甲子園大学心理学部 授業

甲子園大学心理学部 金敷担当の授業をアップします。

心理学基礎実験実習1 第1-2回 (6)

I-Eテスト,内向性-外向性検査,あるいは向性検査という呼び名のこのテスト,こういう性格特性を測定している。

内向性,外向性についての意味合いは板書の通り。

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基礎実験1 板書02-02

「向」なる文字は,興味・関心の向きのことを言っていて,自分自身というのが内(内面などと言うのと同様),自分以外が外ということ,これが内向,外向の示すことである。

外向は ワープロ等で打つと「外交」と同音異義語が出てきてしまう。交わるのではなくて,向きのことを意味しているので,誤変換見逃しに注意しよう。

この内向性-外向性,性格を測定するテスト(質問紙法)で測定できる人の性格のうちで,もっとも安定して測定できる性格特性の1つなのだ。「性格特性」については,他の授業で学んでおこう。質問紙法については,この後で。

とはいっても,自分自身,自分以外,って,よくわかったように見えるけれど……

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基礎実験1 板書02-03

画面アップ。

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基礎実験1 板書02-04

ご覧のように,自己 と 非自己 との間に どこに境界線を引くのが正しいか?というのは,実はわからないことがらなんだね。そのため,自己/非自己の境界線を引くところには個人差が大きくあるといえる。

例えば,友人の悪口を言われて,激怒する人は,その友人は「内」と見なしていることになる。母親と子どもとの関係でもそういうことが多いかもしれない。

想像してごらん 自分のスマホが 機械本体も メモリも すべて壊れてしまうことを……とイマジンの歌詞みたいなんだが,これって,すごく落胆してしまわない?……ということは,単なる物質でしかない所有のスマホも「内」と見なされていることになる。

別の例だと,ヨガなどのトレーニングで,宇宙と合一してしまったという感じを持ってる人がいるよね。その宇宙とやらは,その人にとっての「内」になるね。

これらの例のようにウチ-ソトの区分は,個人差があるだけでなく,時と場合によって変化することもあるので,けっこう曖昧だ。はっきりと線が引けるわけでもなさそう。

この実験で使ったI-Eテストでは,より一般的・平均的に,ソトとかかわる活動だと思われているもの,ウチとかかわる活動だと思われているもの,を文章化して使っている。他者とかかわることがらはソトで,そうでないのがウチという感じの質問項目になる。

 

質問紙法は……このI-Eテストのような,文字を読んで,何らかの評定を行って回答する研究方法の1つだ。この質問紙法,みなさんもわかる人はわかる……最大の弱点(短所)がある。

回答者が文章を理解できない場合,そこに回答された内容は信頼できない 

ということだ。

たとえば

2.初対面の人と話すのは骨が折れる

6.ちょっとしたことでもまごつきやすい 

7.人があつまって話している部屋に独りで入るのに気おくれしない 

16.用心深いたちである 

毎年,受講する学生さんの一部が,よくわからない単語・節だ。慣用句は,もう使わないから死語なんだなぁ,としみじみ思う。

ということで,テスト結果の得点が,安定しないように思われる。これを信頼性が低いという。

他にも短所はある。

 個人の内面を深く掘り下げることができない

 回答者が,社会的に望まれる優等生の回答をしてしまう可能性がある

というのも短所に含まれる。他の授業でも,こういう解説は出てくることだろう。

 

もちろん,短所を補って余りある長所もある。

 短時間で,多くの人々に実施することができる。

 費用(お金・時間・労力)が他の研究方法に比べて安くてすむ

 回答者が,自分自身のペースで回答できる

などがそれだ。

 

つまり,精密に測定することは犠牲にして,より安く・早く・簡単に,情報を手に入れることができるということになる。

健康診断と精密検査の関係もそうだよね。

健康診断は,精密検査よりも安いけれど,どこがどの程度病気なのかは,おおざっぱにしかつかめない。精密検査は,どこがどの程度病気なのか,健康診断よりはっきりとわかるけれど,高いし,時間がかかる。

わたしたちには,ドラえもんはいないので,無限にお金・時間・労力(まとめて「資源」「リソース」という)をかけられるわけじゃない。限られたリソースを,いかにして有効に使うのか,というのが,研究だけではなくて,他の何をするにしても,生きていくうえで重要なことの1つになるよね。

 

とりあえずここまで。 

 

<教科書> 

木下冨雄・上里一郎・中谷和夫・難波精一郎・辻敬一郎  (1975 / 2018).  教材心理学[第4版] ナカニシヤ出版 

 

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