I-Eテスト,内向性-外向性検査,あるいは向性検査という呼び名のこのテスト,こういう性格特性を測定している。
内向性,外向性についての意味合いは板書の通り。
「向」なる文字は,興味・関心の向きのことを言っていて,自分自身というのが内(内面などと言うのと同様),自分以外が外ということ,これが内向,外向の示すことである。
外向は ワープロ等で打つと「外交」と同音異義語が出てきてしまう。交わるのではなくて,向きのことを意味しているので,誤変換見逃しに注意しよう。
この内向性-外向性,性格を測定するテスト(質問紙法)で測定できる人の性格のうちで,もっとも安定して測定できる性格特性の1つなのだ。「性格特性」については,他の授業で学んでおこう。質問紙法については,この後で。
とはいっても,自分自身,自分以外,って,よくわかったように見えるけれど……
画面アップ。
ご覧のように,自己 と 非自己 との間に どこに境界線を引くのが正しいか?というのは,実はわからないことがらなんだね。そのため,自己/非自己の境界線を引くところには個人差が大きくあるといえる。
例えば,友人の悪口を言われて,激怒する人は,その友人は「内」と見なしていることになる。母親と子どもとの関係でもそういうことが多いかもしれない。
想像してごらん 自分のスマホが 機械本体も メモリも すべて壊れてしまうことを……とイマジンの歌詞みたいなんだが,これって,すごく落胆してしまわない?……ということは,単なる物質でしかない所有のスマホも「内」と見なされていることになる。
別の例だと,ヨガなどのトレーニングで,宇宙と合一してしまったという感じを持ってる人がいるよね。その宇宙とやらは,その人にとっての「内」になるね。
これらの例のようにウチ-ソトの区分は,個人差があるだけでなく,時と場合によって変化することもあるので,けっこう曖昧だ。はっきりと線が引けるわけでもなさそう。
この実験で使ったI-Eテストでは,より一般的・平均的に,ソトとかかわる活動だと思われているもの,ウチとかかわる活動だと思われているもの,を文章化して使っている。他者とかかわることがらはソトで,そうでないのがウチという感じの質問項目になる。
質問紙法は……このI-Eテストのような,文字を読んで,何らかの評定を行って回答する研究方法の1つだ。この質問紙法,みなさんもわかる人はわかる……最大の弱点(短所)がある。
回答者が文章を理解できない場合,そこに回答された内容は信頼できない
ということだ。
たとえば
2.初対面の人と話すのは骨が折れる
6.ちょっとしたことでもまごつきやすい
7.人があつまって話している部屋に独りで入るのに気おくれしない
16.用心深いたちである
毎年,受講する学生さんの一部が,よくわからない単語・節だ。慣用句は,もう使わないから死語なんだなぁ,としみじみ思う。
ということで,テスト結果の得点が,安定しないように思われる。これを信頼性が低いという。
他にも短所はある。
個人の内面を深く掘り下げることができない
回答者が,社会的に望まれる優等生の回答をしてしまう可能性がある
というのも短所に含まれる。他の授業でも,こういう解説は出てくることだろう。
もちろん,短所を補って余りある長所もある。
短時間で,多くの人々に実施することができる。
費用(お金・時間・労力)が他の研究方法に比べて安くてすむ
回答者が,自分自身のペースで回答できる
などがそれだ。
つまり,精密に測定することは犠牲にして,より安く・早く・簡単に,情報を手に入れることができるということになる。
健康診断と精密検査の関係もそうだよね。
健康診断は,精密検査よりも安いけれど,どこがどの程度病気なのかは,おおざっぱにしかつかめない。精密検査は,どこがどの程度病気なのか,健康診断よりはっきりとわかるけれど,高いし,時間がかかる。
わたしたちには,ドラえもんはいないので,無限にお金・時間・労力(まとめて「資源」「リソース」という)をかけられるわけじゃない。限られたリソースを,いかにして有効に使うのか,というのが,研究だけではなくて,他の何をするにしても,生きていくうえで重要なことの1つになるよね。
とりあえずここまで。
<教科書>
木下冨雄・上里一郎・中谷和夫・難波精一郎・辻敬一郎 (1975 / 2018). 教材心理学[第4版] ナカニシヤ出版