さて,研究を行うからには……板書を見てみよう。
研究には,目的があり,その目的を達成するための方法がある。
この授業の実習で行う,1つの研究レポートでは,1つの(細かい)研究の,目的,方法,その後に,結果,考察,そして文献,というものが含まれてくる。
この板書は,心理学の研究全体をまとめて考えたものだ。
研究の究極の目的は……つまり心理学は何のために研究の営みを続けているのかということだが,J.B.ワトソンという有名な心理学者が述べたように
人の行動の理解・予測・制御を行うこと になる。
人の行動の原因,あるいは行動の因果関係をつかみ,人の行動の記述と説明を行っていくのが,理解という目標だ。
そして,予測,まだ起こっていない未来のことがらを表現できること,が目標。
もう1つが,「望ましい結果」というものを引き起こし「望ましくない結果」を回避するように働きかけること,これが制御だ。
大学に心理学の実験室(研究室)が誕生したのを,心理学という学問領域が成立した,と見なすと,心理学は100年以上の歴史がある。(この話題も他の授業で心理学史を学ぼう。)
21世紀も20年目に突入の現在,人の行動を,心理学はどの程度,理解して,予測して,制御できるようになっただろうか?
道半ばであるのだが,どの程度かと,ここで指し示すことはできない。こうした究極の目的に向けて,時代の変遷・テクノロジーの進化とともに進んでいる,というのは間違いないところだろう。
次のところ,板書の3.(番号の位置がズレててごめん)
研究の方法,というところだ。目的と手段,という言葉をよく使うが,研究では,目的と方法,という言葉を使う。
方法論,という1つの授業科目になるぐらいの膨大な話題があるけれども,ここでは省略して,具体的な方法の分類だけにとどめておく。
まず,実験,という方法,これは,ものごとの因果関係を科学的に特定することができる方法だ。詳しくは,実際に実習を行って,授業の中で課題の進行とともに伝えたいと思う。
この授業でも実験を学ぶけれど,因果関係の特定というところまではいかないため,厳密には,この授業で行う実験は,準実験と呼ばれている。
調査,インタビューや質問紙などを使って,複数の変数間の関係をつかむ方法だ。相関研究とも呼ばれる。
面接,広い意味では調査に含まれるけれど,心理学では,心理療法の面接が特徴的なので,独立した項目にした。心理学では,面接を通じて,治療,すなわち何らかの制御というのをめざそうとしている。
他にも方法はあるけれど,ここで学ぶのは実験が主なので,ここまでにしておく。
とりあえず ひと区切り。
<教科書>
木下冨雄・上里一郎・中谷和夫・難波精一郎・辻敬一郎 (1975 / 2018). 教材心理学[第4版] ナカニシヤ出版