甲子園大学心理学部 授業

甲子園大学心理学部 金敷担当の授業をアップします。

心理学統計法1 第2回 (1)

はい こんにちは(_ _)

今日は,この統計法1の授業で いちばん重要なところです。

覚えましょう。

教科書は21ページ。

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統計法1 板書02-01

観測対象に,一定の規則をもって,何らかの数字あるいは記号を割り振ることを,測定といいます。そして,測定によって得られた数字あるいは記号を,データといいます。

データとして得られた数字(記号)は,教科書21ページの通り,4種類に分類できます。これを尺度水準,あるいは単に尺度,と言います。

 

尺度水準の低いものから,高いものの順で説明していきます。

名義尺度が板書の最初です。この尺度は,区別・分類するために,数字(記号)をつけたものです。数字の大小に意味はありません。

例えば,学籍番号が名義尺度の代表例ですね。あいうえお順に並んでいるとはいえ,個々人1人1人の区別をつけるために,番号をつけているだけのことで,アルファベット順でも,バラバラな順番でも,とにかく1人1人の区別がつけばよい数値となります。

名義尺度に数字を割り振った場合,その数字の大小に,意味があるわけではありません。例えば性別,という尺度において,男性=1,女性=2,その他=3と割り振ってもよいし,女性=0,男性=1,その他=2と割り振ってもよいわけでして,数字が何らかの方向を持っていることにはなりません。

携帯電話の電話番号なんかも,名義尺度のよい例です。「5年3組」などの組番号も名義尺度ですね。

名義尺度は,数字でなくても,記号でもよいです。組の名前「紅組,白組」でも,チーム名「ブタさんチーム,カバさんちーむ,ゾウさんチーム」でも,名義尺度となります。

 

つぎの尺度が,順序尺度。この尺度は,数字(記号)が順序を示します。つまり,値の順序,大小に向きがあるものを,順序尺度と見なして分類します。これも数字でなくて記号でもよいです。

例えば,大学の成績,秀・優・良・可・不可は,順序尺度。成績が高い-低いの向きがありますね。料理の等級,特上・上・並も,順序尺度の例。

競馬の着順……1着,2着,3着……は順序尺度の代表例。次に紹介する間隔尺度と違うのは,ぶっちぎりの1着でも,ハナ差の微差1着でも,同じ順序尺度が割り当てられるところ。つまり,数字の間の差が,等間隔ではない,ということです。

 

ここまでの,2つの尺度は,数値の演算が原則としてできません。中間テストの成績が10番手で,期末テストの成績が52番手だったとき,総合して62番手とは言いませんよね。

このように,数値として特に意味をもたないデータのことを,質的データ クオリティ・データと呼びます。

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統計法1 板書02-02

次。水準があがって,間隔尺度。

間隔尺度は,数値の目盛りが等間隔で,数値の差に意味があるものを総称します。

100点満点の学力テストの点数は,間隔尺度と見なします。1問1問の難易度が違うのですが,AくんとBくんとはテストで何点差だった,と語ることができるため,みなさん間隔尺度と見なしていることになります。

板書したように,順序尺度の例である競馬の着順では,こんな感じで1着はぶっちぎり,2着と3着は僅差……なんてことがあります。が,間隔尺度では,その値が等間隔に並んでいます。

順序尺度では,どのくらいの差か,ということがわからない。対して間隔尺度では,どのくらいの差か,ということを示すことができる,というわけです。

間隔尺度の代表例は,ほかに,気温(摂氏℃)と西暦。摂氏℃は,水の凝固点(融点)を0℃,沸点を100℃と位置づけて,温度を100等分したものです。西暦はイエス=キリストの生誕年を紀元1年として,(だいたい等間隔の)1年365日ごとに年を決めたものだからです。

このように,間隔尺度は,どこか基準となるところの数値を決めて,等間隔で数字を割り振ったものになります。

気温の例でいいますと,「本日の最高気温は,昨日より10℃高い」などと,数値の差というのを問題にすることができ,その論議に意味があります。

これが,板書した,加減の演算ができるということです。

しかし,本日の最高気温が30℃で,昨日の最高気温が15℃だったからといって,「本日の最高気温は,昨日の最高気温の2倍である」とは言えません。こういう倍数関係を言えるかどうか,というのが,間隔尺度と比率尺度との違いになります。

他の心理学の授業で学びますが,心理学で使う心理テストの点数,あるいは評定値は,間隔尺度と見なして計算されることが多いです。

 

もっとも水準が高い尺度が,比率尺度。比例尺度ともいいます。

この尺度では,数値の倍数関係を示すことができます。 比率尺度では,絶対的な0点があり,0という数値が(存在の)無を示すからです。メートル法の長さ,時間の秒,回数,人数,金額,などが比率尺度の代表例です。

数値の差と比に意味があり,倍数関係を示せるのは比率尺度についてのみとなります。「2mは1mの2倍である」がそういう例です。

したがって,比率尺度においては,数値どうしの加減乗除の演算ができます。

 

間隔尺度・比率尺度をまとめて,量的データ クオンティティ・データと呼びます。量的データは,数値として意味をもつ,何らかの単位をもつデータということです。

 

以上4尺度の分類が,統計学においてなぜ重要かというと,データの集計・集約のしかたが,尺度によって異なるからです。質的・量的データの分類も,推測統計における分析の方法が,この2つにおいて異なるからです。

心理学の研究においては,どの尺度で測定を行うか,を決めることが重要になってきます。後の分析の方向が異なってくるからです。量的データの場合ならば,算数・計算は難しいでしょうが,計算すれば答えが出てきます。質的データの場合,どのように統計の分析をするかを悩んでしまうことも多々あります。

と,研究や何をどのように測定するか,そして集計や分析をどう行うか,というところまで考えると……統計法,大学で心理学を学ぶのに使う統計法,特にこの心理学統計法1という授業において,いちばん重要なところは,以上の尺度水準の分類のところなのです。

とりあえずここまで。 

 

<教科書>

稲葉由之  (2012).  プレステップ統計学Ⅰ:記述統計学 弘文堂

 

<文献>

山内光哉  (1998).  心理・教育のための統計法[第2版] サイエンス社 

 

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