甲子園大学心理学部 授業

甲子園大学心理学部 金敷担当の授業をアップします。

心理学基礎実験実習1 第1-2回 (3)

次,この授業で学ぶ,実験のこと。

覚えておいてほしい用語がいっぱいある。

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実験実習1 板書01-03

先ほど述べた,観測された行動を,一般的にデータと呼ぶ。

心理学では,この観測されたデータを,実験の因果関係における結果と見なす。

これを,従属変数という。指標という言葉も使うし,目的変数とも呼ばれる。

そして,その原因と見なせる(人の)属性,従属変数ではない別の行動(データ),あるいは研究上の人為的な設定を,独立変数という。

独立変数は,別名で,要因,説明変数などとも呼ばれる。

つまり,実験では,独立変数と従属変数との間に因果関係があるといえるかどうかを,明らかにすることが最終的な目的となる。

独立変数の中に,条件と呼ばれる複数の属性・行動・設定を決めて,従属変数となるデータを測定し,条件ごとに比較するのが,実験の一般的なパターンとなる。

従属変数や独立変数は,心理学統計1の授業でも触れていくよ。

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実験実習1 板書01-04

次の板書ーーー 

独立変数と従属変数との関係が,真に因果関係といえるためには,板書の通りの注意や働きかけが必要になる。

統制 コントロールとも言うこの言葉,実験中の様々なところで注意しないといけないんだけど……ここでは2つの注意点をあげておく。

まず,データの測定手続きが一定である必要がある。例えば……4月3日のオリエンテーションで登校した学生は,バス停と大学で体温測ったよね。あの非接触式の体温計って,体温計の機械本体が16℃以上でないと,うまく熱が測れないんだ。寒かったりすると,本体が冷えてしまって,測定した体温が変な温度になっていたりする。実は測定手続きが一定でなかった,つまり統制ができてなかった,ということの想像しやすい例だと思う。

2点目は,独立変数と従属変数以外の,別の何か(変数)が混じっていないかどうか。この別の何かというのを,二次変数というよ。この後の実習で,さっそく二次変数の問題が出てくるから,そこで解説するね。

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実験実習1 板書01-05

次の板書

でもね……心理学の実験というのは,まったく同じ材質・同じ形状をした,試験管やシャーレに,一定の条件の試薬を入れて,一定の温度条件下に置くような……そんな統制はできない。そもそも,わたしたちは,まったく違う生活環境の中で育ってきているわけだし,遺伝的にも同一ではないし,朝に体調いい人もそうでない人もいるし,ということで,統制できない二次変数が多すぎるんだ。

だから,心理学では,実験結果を因果関係とは主張しないことが多い。

従属変数に対する独立変数の効果(影響)を検討する,という程度にとどめる。

原因と結果の関係ではなくて,従属変数に独立変数が関連しているのか(効いているのか)を明らかにするんだね。

先ほどの実験の統制について,心理学の実験では,従属変数に対する独立変数の効果と真に言えるのか,という問題になる。心理学の実験において,二次変数が入り込んでしまうと,見かけ上効果があると結論づけられるデータが出てしまうことがある。

心理学では確かに統制できない二次変数は多いけれど,実験の統制の及ぶ範囲内において,二次変数はできるだけ統制されることが望ましい。それが,従属変数に対する独立変数の効果と断定できるために必要なことだ。

 

さて,板書の下部

専門用語で従属変数・独立変数という言葉を使っているが,わたしたちも日常会話で従属変数に対する独立変数の効果という考え方をするよ。

1番目の会話だと,従属変数は「カレーの美味しさ」,独立変数は「個人差」だね。いや,もしかすると,Bさんは「俺は嫌いだ」と言いたかっただけなのかもしれないけどね。

2番目の会話だと,(野球観戦の例で申し訳ないが),従属変数は「オリックス・バファローズの試合の勝敗」,独立変数は「私が試合を見に行くかどうか」になる。蛇足だが,「私が試合を見に行くとチームが負ける」が真に因果関係であるためには,「私が見に行った試合」は全敗「私が見に行かなかった試合」は全勝であることが必要。

このように,意外にも,わたしたちは日常会話で,従属変数に対する独立変数の効果という考え方をしている。

みなさんも,日常会話の中で,実験のような発想の会話を見つけてみよう。そして,その会話の中の従属変数は何か,独立変数は何かを特定してみよう。

とりあえずここまで。

 

<教科書> 

木下冨雄・上里一郎・中谷和夫・難波精一郎・辻敬一郎  (1975 / 2018).  教材心理学[第4版] ナカニシヤ出版 

 

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